第15章 ガジル 「決心」
家に着いて玄関から覗いて中を見る。
部屋はボロボロで中に入るのに足がすくむ。
ガジルはそんな私を見て少し考えた。
「…怖いか?」
ここで襲われたのも怖いし、お兄ちゃんのネックレスを見るのも怖い。
コクコクと頷くとガジルも頷いた。
そしてまた私を抱いて今度はフェアリーテイルに向かった。
フェアリーテイルにはまだ何人かいてその人たちが私たちを見つめてくる。
「どうしたんじゃ?…何かあったか?」
小さなお爺さんが話しかけてくる。そして私の赤くなった目を見てからお爺さんは笑った。
「…ここはお前さんを傷つけるやつはいない。ガジル。…2階の小さい部屋で良いなら使いなさい」
「ああ、助かる。爺さん」
ガジルはそのまま2階に上がって行った。
お爺さんに頭を下げるとお爺さんはニコッと笑って手を振った。
2階に着いてガジルが部屋を開けると赤髪の女の人が樽の上に座って横目でこっちを見た。
「…ガジルだったか」
私を見て彼女はゆっくり立ち上がって出ていく。
…ここは優しい人が多いんだな。
心がポカポカしてきたとき、ガジルは私を男の人が座っていた樽に座らせた。
「…すまん。俺のせいでお前を危険な目にあわせた」
「……ううん。あの人たちガジルに復讐しようとしてたんでしょ。分かってるよ」
私が笑いながら言うとガジルは私の後ろの壁に両手をついた。
そして見つめながら言ってくる。
「カナタ。怖かっただろ。今後もあるかもしれねえ。……俺と、別れても良いぞ」
声が震えている。
私の胸がドクン、と脈打つ。
確かに怖かったけど、それ以上に
「私の事、守ってくれないの?助けに来てくれないの…?」
お兄ちゃんも、ガジルも居ない私はどうやって生きていけばいいのか。
ガジルの瞳が揺れる。
「…私は、ガジルがいなかったら死んでた。あの時もこれまでも…。ガジルに支えられて生きてきたの。……過去の事、一緒に背負わせてくれないかな」
私はそう言ってガジルに抱きつく。
するとガジルは私の背中にゆっくりと腕を回した。
「…良いのか。本当に良いのか?」
「もちろんだよ」