第14章 ジェラール 「会えないけれど」
「ジェラール……」
すっかり青年になっているけどわかる。綺麗な顔立ちで面影もある。
驚きすぎて震えが止まらなくなった私は腰を抜かしてしまって座り込んでしまった。
「…久しぶり。カナタ。元気だったか?」
「元気…、だよ。…っ」
泣いてしまって上手く話せないでいると彼はいつかの日のように私の横に座った。
「…良かった。心配だったんだ。……俺らに何も言わないで。あの日から俺は………」
「……俺は?」
苦しそうに眉を顰める彼に聞く。
すると彼はフッと笑った。
「…なんでもないよ。俺が不甲斐ないばかりに申し訳なかった。……ミリアーナから聞いたよ。全部」
私は下を向く。ミリアーナのことを思い出して唇を強くかみ締めた。
「俺に言わなかったのは、俺のためだよね。そんなこと分かってるけど、…なんで言ってくれなかったんだ」
私の顔をのぞき込みながら悲しそうに笑っている。
胸が痛くなって私は更に泣き出してしまう。
それを見た彼は私を抱きしめた。
「…ごめんね。君の方がもっと辛かったはずだ。………ごめん」
謝る彼の背中に私も手を回す。
ジェラールは少し力強く私を抱きしめた後、離れて言った。
「カナタ…、最後のあの日、俺に何か言ってたよな」
心臓の音がうるさくなって汗が止まらない。
「…あの、何も言ってない」
「……そっか」
お互い無言が続いて彼は立ち上がった。
「じゃあ。俺、連れがいるから。また会えたら」
笑って私に背を向けた彼。
見えなくなる時に言った。
「何も無いなんて嘘…。大好き…。大好き」
そう言って目元に溜まった涙を拭った瞬間、手首にある不思議なマークが目に留まる。
「…何、これ」
ぽかんとして口を開けていると走ってくる足音が聞こえた
慌てて前を見る。
ジェラールが、走って戻ってきていた。
「…はぁっ、カナタっ!」
私の心臓はいまさっきと尋常じゃないくらいうるさくてしかも熱い。
「……俺も、だから」
「…………何が?」