第14章 ジェラール 「会えないけれど」
…ついに今日が最後の日。明日、私はあの気持ち悪い人の元へ連れていかれる。
ミリアーナは私の手をずっと握って離さない。
私はジェラール達の所へ向かった。
「皆!」
「おお、風邪は治ったのか?」
ウォーリーが嬉しそうにこちらを見る。
シモンやエルザも心配そうにこっちを見ていた。
「…ごめんね。心配させちゃって」
ミリアーナが気を利かせて風邪だと言う事にしてくれていたらしい。
シュンが私の手を握った。
「…でも、カナタ。まだしんどそう…?」
シュンの頭を撫でる。
「そんな事はないよ。今日は皆で遊ぼっか!」
散々遊びたくないと思っていたけど、最後の日くらい皆とたくさん笑いたい。
そう思ってその日は皆と沢山遊んだ。
夜になって、皆で寝る。
すると監視役のあの男に声をかけられた。
「行くぞ」
こんな夜中に行くのは不思議だったけど、私としては後腐れないから少し良かった。
私はジェラールの頬にキスをする。
「…今までありがとう。あの時、声をかけてくれてありがとう。大好き」
早くしろと小さい声で急かされて私は牢屋を出る。
とうとう私はあの塔を出たのだった。
それから10数年、私は今は静かに1人で暮らしている。
あの後私を買い取ったおじさんは違法な事でお金を稼いでいたらしく、捕まった。
楽園の塔も壊れてしまったらしい。
皆、元気にしてるのかな。
家を出て歩いているとこんな暑い日なのにローブを着た男の人が目に入る。
…なんかヤバそうな人だな。
私が少し遠くを歩いて横切ろうとした瞬間、その人に腕を掴まれた。
「っ…!何!?離して!!」
「すまない。こっちに来い」
とても強い力で手を引かれる。
…私また奴隷にでもなってしまうのだろうか。
嫌だ。そんなの嫌だ!
あの気持ち悪い男の元で育ったあの日から、死んだ方がマシだと思えた。
もう二度とそんな目には会いたくない。
路地裏に連れ込まれる。
私が震えてその人を見ているとその人はローブを外した。
「俺だ」
目の前には懐かしいあの人が立っていて。