第13章 無敵の甘いモノ、頂戴? / 徳川家康
(……見事に女の子ばっかだな、それに)
甘ったるい匂いが店内に充満してる。
きゃあきゃあと黄色い声で賑やかな店内で、俺は結衣に見えないようにこっそり息をついた。
話を聞いた夜から三日後。
俺と結衣は、その甘味屋を訪れていた。
店内は満席、机が店の真ん中に並べられて、そこにはこれでもかと言うほど甘味が乗っている。
そこから好きに甘味を取り、自分の席に持って行って食べるのだという。
食べ終わったら、また好きなのを取りに行って……と繰り返すらしいが、残すのは厳禁なのだとか。
上手いこと考えだなぁと関心する半面、やはり甘いものを好むのは女ばかり。
男がいないわけではないが…やはり少しばかり居心地が悪いかもしれない。
「っ……すごいね家康、どれも美味しそう!」
「……そうだね」
「どれから食べようかな…あ!苺が乗ってるのがある、こっちは黒蜜……ええと、これとこれと」
(結衣、興奮してるな…可愛いけど)
目をきらきらさせながら、大きな皿に甘味を盛っていく結衣。
正直胸焼けしそうなくらい、甘そうな甘味ばかりだ。
それでも、はしゃぐこの子を見られるのならば、やっぱり一緒に来て良かったと思う。
俺はきな粉と抹茶、二種類のわらび餅をそれぞれ器に盛り、席に運んだ。
そしてお茶も持ってくる、どうやらお茶も飲み放題らしい。
……ハッキリ言って、店の採算は取れるのだろうか。
「じゃあ食べよう、家康」
「うん、いただきます」
結衣と手を合わせてから、黒文字を使ってわらび餅を口に運ぶ。
甘さがほどよく、餅は口に入れた瞬間とろりと蕩けた。
(……政宗さんのより美味しいかもしれない)
あの人が作るわらび餅が一番美味いと思っていたが、こちらも負けずにめちゃくちゃ美味い。
きな粉の甘さも丁度いいし……
と思いながら結衣を見れば、ふにゃふにゃと幸せそうな笑みを浮かべながら甘味を食べていた。
「わぁ〜この黒蜜、濃いなぁ。こっちの苺もみずみずしいし……」
「……」
「お餅も、もちもちだぁ…おいしーい!」
何やら、一人で納得しながら食べている。
むしろ食べるのに集中しすぎて、俺との会話が全然ないんですけど。