第12章 𑁍蒼色マリアージュ《蜜愛編》/ 伊達政宗
─────だが、この先
もっとさらに拗れることになるのだ
「結衣……」
「な、な、な……まさ、まさっ……!」
「結衣さん、大丈夫ですか?!」
絶句する結衣。
その後ろから姿を現したのは、なんとあの若旦那。
名を呼ばれ、結衣もびっくりしたように振り返って。
真ん丸な瞳をさらに丸くさせた。
「え、若旦那さん……?!」
「すみません、結衣さん独りじゃ心配で」
「そ、そんなことしなくていいのに!」
(……なんだこれ、どういう事だ)
目の前の光景に、思考が固まる。
驚いている結衣に、心配そうに話しかける若旦那。
この茶屋がいかがわしい場所だと言うのは、二人も知っているはずだ。
結衣は俺と凛がここへ入るのを見て、ここへやって来たのだろう。
だが、若旦那も一緒に来たのか?
まさか……俺への当てつけで、二人も。
二人も、体を重ねようと。
二人の会話は耳には入らなかった。
だが、なんだかものすごく仲睦まじく感じられて。
心に燃える真っ黒な火が、さらに燃えさかる。
ふざけんなよ、誰がさせるか。
結衣は、結衣は、
─────俺だけのものなんだよ
「っ、政宗様?!」
俺は瞬時に身を起こし、立ち上がると結衣に近づき腕を掴んだ。
そして、強引に引っ張って部屋から出る。
まだ昼間なのだから、空き部屋の一つくらいあるだろう。
結衣に仕置きを。
俺以外の男と、こんな場所に来たことを後悔させてやる。
「政宗……?!」
「来い、結衣」
「政宗様ぁ〜?!」
「うるせえ、お前は黙ってろ!」
結衣をぐいぐいと引っ張って、薄暗い廊下を進めば、襖が開いている部屋があった。
俺はそこに結衣を放り込む。
そして、後ろから着いてきた茶屋の者に静かに行った。
「明日の朝まで、この部屋貸し切る。金は言い値で払う、どんなに高くてもいい」
「は、はあ……」
「その代わり、絶対誰も部屋に近づけさせるな。俺が出てくるまで、解ったな」
「か、かしこまりました!」