第12章 𑁍蒼色マリアージュ《蜜愛編》/ 伊達政宗
「でもさー、こんな事したら余計に拗れるんじゃないですか?」
「……まあな」
「素直に結衣様と話し合った方がいいと思いますけど」
「お前いい女だな、頭撫でてやる」
話をはぐらかして、凛の頭をぽんと撫でる。
それでも心配したような表情は変わらず、俺も思わず嘲笑してため息をついた。
なんだろう、頭の線が一本切れてから、俺はちょっとおかしいと思う。
俺ばかりこんなに嫉妬してるのが嫌で。
結衣にも嫉妬してほしいと……わざとこんな真似をしてる。
(まるで、好きな女をわざといじめるガキみたいだ)
それが分かっていても止められなかった。
祝言前に噂に振り回され、結衣を疑って醜い感情を晒してる。
手に負えないガキだな、俺。
やっと結ばれるのに……何をやっているのだろう。
また一つため息をつく。
すると、何故か凛がにやりと意地悪く笑った。
「だったらもう、やる事やって楽しんじゃいましょ♪」
「は?……っ、おい」
凛がいきなり手を伸ばして首に纏わりついてきたかと思ったら、急に背中から寝っ転がる。
俺は引っ張られ、さっきとは体勢が逆転。
今度は俺が凛に覆いかぶさる形になった。
凛はにやーっと笑い、襟元から手を差し込んでくる。
俺は慌ててそれを止め、凛の手首を掴んだ。
「やめろ、する気はねえって言っただろ」
「でも始まっちゃえば、ほら♡」
「結衣以外は抱かねえんだよ。……ん?」
その時だった。
何やら部屋の外、廊下が騒がしくなり……
ドタバタと複数の人間が走ってくる音がする。
「お客様、そっちはだめです!」
「でも、絶対こっち!私の勘がそう言ってる!」
「誰かこの娘を止めろ!」
……なんか聞き慣れた声のような。
そう思っているうちに、その足音と騒ぎ声が近づいてきて。
いきなり、すぱーんといい音がして襖が開いた。
そして姿を現したのは……
「あ」
「ま、さむ、ね………っ!」
状況最悪。
まるで俺と凛が致しているかのような体勢。
その場に現れたのは……結衣。
俺と凛、そして結衣。
三人の視線が合致して、なんとも言えない空気になる。
結衣は目を見開き、唇をワナワナと震わせながら絶句していて。
さらに拗れたな、と思ったのは言うまでもない。