第11章 蒼色マリアージュ《疑惑編》 / 伊達政宗
「……」
「……」
帰り道もお互い無言だった。
一緒に歩けば、いつも嬉しそうにする結衣も黙ったままで。
久しぶりに会えたのに嬉しくないのか。
顔を見られて心が弾んだのは俺だけか?
「……結衣」
「……」
「結衣?」
「……は、はいっ!」
(はいって、その他人行儀な返事はなんだよ)
足を止めて結衣を見る。
結衣はやはり顔を少し染めたまま俺を見上げたが……すぐに俯いてしまった。
なんだよ、その可愛くない態度は。
いつもなら何を見ても、どんな仕草でも可愛いと思っていたけれど……何故か今日はそう思えない。
「なんかあったのか、お前」
「え、な、何もないよ……?」
「なら、なんで目ぇ逸らすんだよ」
「っ……」
その煮え切らない態度。
それを見ていたら……
───────ぷつっ
何か頭の中で、音を立てて切れた。
お前は俺のものだろ?
その瞳は、俺だけを映していればいい。
なんで、どうして、
俺を見ないんだよ。
黒い焔に呑まれる。
劣情が、醜い嫉妬心が……
俺を喰らい尽くして真っ黒に染める。
「きゃっ……!」
俺が強引に結衣の手を引くと、結衣はびっくりしたように声を上げた。
そのまま路地裏に引きずり込んで、壁に華奢な体を押し付ける。
結衣は『痛っ』と言って表情を歪めたが、そんなのは知らない。
結衣の顔の横に手をついて……
俺はそのまま、強引にその唇を塞いだ。
「っ…んぅ…んんっ……!」
結衣が苦しそうに吐息を漏らす。
そして、俺の胸元をドンドンとこぶしで叩いた。
嫌なのかよ、口付けられるの。
いつもしてやると、顔を蕩かすくせに。
柔らかな唇に噛み付いて、歯を立てて。
舌を絡めとったら、深くまで口内を犯した。
上顎、舌の付け根とか、弱い部分は知り尽くしてる。
そこを執拗に攻めて、吐息も奪ってやった。