第10章 初愛の君に終焉の愛を誓う / 豊臣秀吉
俺が言えば、結衣は少し俯きがちになって頷いた。
こればかりは過去のことだから、消そうにも消えない。
でも……お前はそれを気にするから。
だったら、そこに上書きしてしまうしかないのだと思う。
「お前だって、俺が最初の男じゃないだろ?」
「う、うん…たくさんはしてないけど」
「俺がお前の昔の男が気にならないのは、なんでだと思う?」
「……分かんない」
「それはな」
俺は結衣の小さな手を握り……
ありったけの想いを言葉に紡いだ。
「俺が、お前の"最後の男"になるからだ」
すると、結衣は目を輝かせて俺を見る。
それは驚きと共存して、何かを期待しているような眼差し。
そう、理由は明白。
俺はお前の"未来"に、他の男を寄せ付ける気がないからだ。
「最初の恋が最後の恋になる事もあると思う。最初の相手が最後の相手になることも」
「……」
「だが、生涯でたった一人だけを一生愛せる…なんて稀だと俺は思うんだ。そして、最後の相手に出会うまでに出会った恋や相手は、きっと通過点に過ぎない」
「通過点……」
「重要なのは最後の恋と相手だ。一生添い遂げて、想い合える。そんな"最後"が最初より途中より、全然大事だって俺は思う」
正直結衣が、他の男に抱かれていた過去があることは、当然の如く面白くない。
柔らかい唇や甘い肌、乱れた時の可愛い姿も……
俺以外の男が見てきた過去は消し去ってしまいたいとすら思う。
けれど過去は変えられないし、気にしてもそれが消えるわけでもない。
だから、俺は思った。
俺が結衣の最後の男になると。
これからの長い未来…共に歩んでいける、お前はずっと俺の傍に居てくれると。
そう信じているから、過去より今と未来が大事だ。
「そして、お前は俺の"最後の女"だ」
「秀吉さん……」
「今まで出会ってきた女とは全然違う、こんな激情に駆られるのはお前だけだ。誰より愛してるから、お前以外は愛せないし、愛する気もない」
「っ……」
「ずっと傍にいるって、そういう意味だ。ごめんな、言葉が足りなくて。だけど愛してる、お前を誰よりも何よりも」