第10章 初愛の君に終焉の愛を誓う / 豊臣秀吉
─────俺は、本当に馬鹿だ
言葉足りずに、結衣を落ち込ませた。
最小限の言葉で全て伝わるなんて……
我ながら、傲りすぎたと思う。
(遅くなっちまったな、結衣起きてるか?)
公務が終わったのは深夜になってからだ。
日が沈んで、三刻は経ったはずだ。
予定よりもだいぶ長引いてしまったから、結衣はもう寝てしまっているかもしれない。
そう思いながらも部屋を訪ねる。
「結衣、起きてるか?」
静かに声を掛けると、すぐさま襖が開いて……
中から愛しい女がにっこりと笑って出迎えてくれた。
「秀吉さん、お疲れ様」
「悪かった、遅くなって。明日にするか?」
「ううん、大丈夫だよ。明日は仕事ないし、夜更かししても平気っ」
昨夜も割と求めた自覚があるので、早く寝てほしいと思う気持ちもあるが、それを押し込めて部屋に入る。
中には茶と茶菓子が用意してあり、結衣は俺を今か今かと待っていてくれたのだろう。
本当に可愛い、恋は盲目とはよく言うが、結衣が可愛くて仕方ない。
結衣と向かい合って座り、茶が注がれるのを待つ。
結衣は俺に『どうぞ』と湯呑みを渡し、茶菓子を勧めてくれたが……
その用意してくれた茶菓子に思わず目を見開いた。
「煎餅……」
「ふふっ、懐かしいでしょ?」
「そうだな、色々思い出した」
『─────私に無理して笑わないで!』
あの日、忙しい俺を訪ねてくれた結衣。
手作りの煎餅を持ってきてくれて……
もてなそうとしたら急に怒りだし、言われた言葉だった。
ただの客人から妹に、そして好きな女に。
気持ちが膨らんで戸惑って、無理やり本心から目を逸らしていた時期もあった。
でも今、結衣と一緒にいられて幸せだ。
だから、知ってもらいたい。
俺の気持ちを、どれだけお前を想っているのか。
「結衣、今朝の話なんだが」
「うん……」
「お前が最初の女じゃないことは否定しない。正直な話、楽しい恋もそこそこにしてきたから……女を抱いたのもお前が最初じゃない。それも認める」
「……」