第10章 初愛の君に終焉の愛を誓う / 豊臣秀吉
「あー……」
「うーん……」
政宗と家康は、私の話を聞いて同じように唸った。
二人とも顔を見合わせ、後ろ頭を掻いたりして、どこか気まずそうで。
……私、なんか変なこと言っただろうか。
すると、政宗と家康が聞こえるか聞こえないかくらいの小さい声でポツリと言う。
「気がついてるか、家康」
「勿論です、あんなに殺気を出されちゃね」
「……?」
(なんて言ったんだろう……?)
私が首を傾げると、何故か政宗はにやりと不敵な笑みを浮かべた。
瞬間、いきなりぎゅーっと抱き竦められたから溜まったもんじゃない。
「〜〜〜っっ?!」
声も出ずにパニクってしまう。
え、え、政宗、なにやってんの……?!
思わず固まってしまい、頭も真っ白になって棒立ちになってしまった。
なんか知らない匂いがする、政宗の香りなのか。
少し甘くてほろ苦い香りは、秀吉さんの匂い。
違う匂いに包まれてるの、私?
……って、秀吉さん意外に抱き締められるとか、絶対だめだし!
少し遅れてやっと思考が戻ってきて、何とか抗おうとした時。
予想外に強い力で政宗からひっぺがされ、私はぱちくりと瞬きをした。
「っ、わ……!」
「政宗、なにやってんだ!!」
え、この声。
私を守るように抱き締める大きな体は、まぎれもなく秀吉さんだ。
胸にすっぽり包まれてしまい、ちょっと息苦しいけど、香と煙管が混じった私の大好きな匂いがする。
……いや、安心してる場合じゃない。
なんで秀吉さんがここに居るんだろう。
さっき御殿から帰る時、一人で帰るから見送りは要らないよって言ったのに。
「政宗、てめえ……!」
「落ち着け秀吉、ただの戯れだから気にすんな」
「だからってしていい事と悪い事があるだろうが!」
「はあ……政宗さん、あの殺気を浴びせられた上での、この悪ふざけ。いつか本当に殺されますよ」
頭の上でわぁわぁと何やら言い合いが続き、家康の呆れたような声も聞こえたり……
私はと言うと頭の中がクエッションマークだらけで、でもとりあえず秀吉さんにしがみついてみることにした。
すると、秀吉さんの腕が緩み、大きな手が私の両頬を包み込む。
そのまま上を向かされ、なんだか怒ってるみたいな心配してるみたいな瞳で見つめられた。