第10章 初愛の君に終焉の愛を誓う / 豊臣秀吉
────それは、いつもの朝から始まった
前日、秀吉さんの御殿にお泊まりした私。
まだ一緒に住むのは信長様が許してくれていなくて、私は時々御殿へお泊まりに行っていた。
秀吉さんと甘い夜を過ごした翌朝、身支度を整えていると、秀吉さんが髪を結ってくれて。
そのことが、発端となる。
『ほら、出来たぞ』
『わあ…ありがとう、秀吉さん器用だね!』
鏡を見てみれば、シンプルだけれど女らしい髪型に仕上がっていて、いつもとは違うスタイルがとても嬉しかった。
すると、鏡越しの秀吉さんの表情が緩んで……
私の頭を撫でながら、優しく言ってくれた。
『喜んでくれて良かった』
『男の人ってこういうの苦手な印象あったんだけどなぁ、秀吉さんは何でも出来るんだね』
『うんまあ…慣れてるってのもあるかもな』
その言葉に、私は目を見開いた。
慣れてる……って、それはつまり。
『……昔の恋仲の人にやってあげてたってこと?』
『まあ、そうだな』
『慣れるくらい、たくさん?』
『うーん……やってやったのも一人じゃないっていうのもあるし』
その言葉に、少しだけ心にトゲが刺さる。
確かに秀吉さんは女の人にすごくモテるし、昔に恋仲の人が居たって不思議じゃない。
色んな意味で、秀吉さんは女の人に慣れてる。
だから夜を共に過ごした相手がいたって、全然変じゃないし、当然のことなんだけど……
(でも、それってなんか嫌だなあ……)
秀吉さんの無骨でも優しい手が、私以外の女の人を気持ち良くさせていたのだと思うと、何だかモヤモヤした。
顔も知らない恋敵ができたようで、自然と視線が下を向いてしまう。
『……秀吉さんは昔、何人くらい恋仲の人がいたの?』
『気になるか?』
『多少は。だって逆に秀吉さんだったら、私の恋愛経歴気にならない?』
『うーん、特に気にならないな』
『……どうして?』
『お前はこれからずっと傍にいてくれるだろ?』
朗らかな笑みを浮かべ、秀吉さんはいつものように優しい口調で言った。
それは、秀吉さんが本当に私の過去の恋人なんて気にしていないと証明していて。
私は正直、それが納得いかなかった。
秀吉さんは、私が知らない誰かに抱かれていた事は、気にならないの?
気にしているのは、私だけなのか。
だって……二人だけの時に見せる秀吉さんの顔は、私だけが知っていたいのに。