第1章 誘う一線、捕まった花心 / 豊臣秀吉
「んっ…んぅ……」
すぐさま舌を絡めとられて、奥までまさぐられる。
初めてのキスなのに、気持ちいい所をすでに知っているかのように舌先で愛撫されて、もう立っていられなくなった。
思わず秀吉さんの胸に縋りついてしまうと、回った腕でしっかりホールドされて、ぐずくずと蕩けて崩れることも許されない。
(頭がクラクラする……なにこれ)
こんなに気持ちいいキスは知らない。
私は経験豊富な訳ではないけれど、荒々しいのに優しくて、溶かされる…そんなキスはされたことがない。
限界がきて、膝がガクッと落ちたところで秀吉さんは私を支えながらようやく離してくれた。
口の間につーっと糸がひいて、息を荒らげていれば……
その先で、薄茶の瞳が濃く熱を孕んで煌めいていた。
「宴……出られなくなったら悪い」
「え……わぁっ」
いきなり抱き上げられたものだから、素っ頓狂な声が出る。
部屋の奥に運ばれてしまい……
秀吉さんは私を下にそっと降ろすと、そのまま大きな体で覆いかぶさってきて、ドクドクと私の心臓が早鐘を打った。
(嘘……私、秀吉さんと、このまま)
息が荒くなる。
でもそれは私だけじゃない。
秀吉さんも、口は一文字に結んでいるけれど、肩で息をするように上下させていて。
秀吉さんは私の頭を愛おしげに撫でると、そのまま耳に唇を寄せてきた。
そして、そのまま囁かれたのは。
「─────好きだ」
「っ……」
「もう、止めてやれない。……愛してる」
その言葉が合図かのように、私を乱し始めた秀吉さんは私の知らない男の人のようだった。
私達、両想いだったんだね。
兄妹とは上辺だけで、本当はお互い想い合っていたんだ。
切なげに響く甘い声はいつまでも耳の中でこだまする。
私は必然のように、何度も愛しい人だけの名前を呼んだ。
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