第9章 𑁍想いを絡めて囚われて / 政宗、秀吉
首だけ少し振り返ると、確かに秀吉だった。
翡翠色の長着を着た秀吉が、険しい顔をして結衣を潰さないようにと少しだけ上半身を起こしている。
だが、完全に体を起こせる高さが無いらしく、右手を天井について、左手を横の壁に付いていた。
こうなる前の行動を三人で話してみれば……
やはり政宗と秀吉も結衣と同じく、御殿で湯浴みを済ませた後に廊下を歩いていたら、床が抜けたような感じがしたらしい。
そして、気がついたらこうなっていた、と。
何とも奇天烈で不可解だ。
何故こんなことになったのだろうか。
「しかも、出られる所がないな。天井も開かないし、壁も動かない」
「え、本当にーーー?!」
「完全に閉じ込められたってことか、ははっ面白ぇ」
「政宗、笑い事じゃないよ!」
結衣が焦ったように言っても、政宗はやれやれと言ったように笑っているだけ。
秀吉も秀吉で案外落ち着いているし、一人で慌てているのがばかみたいだと結衣はため息をついた。
「ちょっとは出られるように考えてみようよ」
「いや、俺としてはこれはこれで……」
「へ?……ひゃっ」
突然剥き出しの太ももを撫でられ、結衣は素っ頓狂な声を上げた。
政宗を跨いでいるため寝間着の裾は割れ、白い滑らかな脚は恥ずかしいほど晒されている状態。
それを政宗が無骨な手で撫で上げる、何度も何度も肌を滑るように。
「ちょっ……政宗!」
「おい、政宗。どさくさに紛れて何やってんだ!」
「うーん、この状況で触れないのはおかしいだろ?」
「ふ、触れる、方が、変、だよ……!」
秀吉が叱っても止めない政宗。
手が動く度にぞわりと肌が粟立ち、結衣はたどたどしい声で苦言を呈した。
それでも手は止まらず、今度は指の背で内太ももを撫でたものだから、溜まったものではない。
「政……っあ」
若干艶めいた声が漏れてしまい、結衣は慌てて口を手のひらで押さえる。
反射的に身を引いたため、結衣の尻がずりっと秀吉の体を擦った。