第9章 𑁍想いを絡めて囚われて / 政宗、秀吉
「おい…結衣、結衣ー?」
「……え、政宗?!」
「っ……結衣、動くな!」
「……うん?!」
前と背後で別の人の声がする。
目を覚ました結衣は、頭の中にたくさんクエッションマークを浮かべながら、目の前にいる政宗にしがみつくしかなかった。
正確には目の前で『押し潰している』が正しい。
ほのかに明るくもものすごく狭い場所で、結衣は政宗の事を変な姿勢で押し倒していて。
しかも、政宗は少し前屈みの状態で寝転んでいる事から、どうやら肩と頭だけ壁に付いた状態で、背中から腰、下半身は床という何とも痛そうな体勢だ。
結衣はと言えば、政宗の腹の横に両膝を付いて、その両肩にしがみついている状態。
ほぼ四つん這いの格好だが、先程から背後にいると思われる人物の体が当たっているらしい。
大きな体が結衣に中途半端な感じで覆い被さっているのが分かった。
(なんでこんな状況になったの……?!)
結衣はパニックになりながら、今までの自分の行動を振り返る。
確か湯浴み後、髪を拭きながら部屋に戻るために廊下を歩いていて。
そしたら、いきなり床が抜けたような感覚に襲われ落下して、その衝撃で意識が飛んでしまったらしい。
起きてみれば、すでにこの状態。
政宗がクッションになっていたのか、床に叩きつけられたような痛みはなかったが……
だが、この狭い場所はなんなのか。
政宗の後ろは壁、そして床、左右もすぐ壁。
天井はどうなっているか分からないが、感覚的には小さな箱の中にでも居るような感じである。
「と、とにかく今起きるから……!」
「だから、結衣は動くな……!」
結衣が政宗から体を起こそうと少し動いた瞬間。
また背後から少し焦った声がして、その声に聞き覚えがあるな…と思っていると、政宗が何やらニヤリと笑ってその答えをくれた。
「今結衣に動かれると拷問だよな、秀吉」
「え、秀吉さん……?!」
「悪いがじっとしててくれ、天井も低くて体があんまり起こせねえ」