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【イケメン戦国】花紅柳緑𑁍𓏸𓈒

第5章 愛い花 / 徳川家康




「ごめん。あんたは……この世で一番可愛いよ」


『かあ様、しおととう様、どっちが可愛い?』

詩織が訳分からない質問を結衣に投げかけた昨夜。
結衣は当然の如く『しおのが可愛いよ』と答えた。
詩織はご機嫌で布団に入り、入れ替わりでやってきた伊織がした質問。

『とう様、いおとかあ様、どっちが可愛い?』

俺は本気で悩んだ挙句、『いおかな』と答えた。
問題はこの後だ。
結衣が冗談で『じゃあ、かあ様ととう様、どっちが可愛い?』と伊織に聞いた時。
伊織は『とう様かなー』と答えたのだ。

一瞬ギョッとしたが、結衣は気にしてないようだったので、俺もそこで終わったと思っていたのだが……
結衣がぽつりと漏らした台詞に返した言葉がまずかった。


『私、一番可愛くないのかあ』
『そんな事ないと思うけど…でも、もう可愛いって言う年齢ではなくなったかもね』
『っ……そんな事、解ってるよ!』


……思い出しても、なんと空気の読めない発言をしたのかと思う。
俺と結衣はもう三十路も半ばに差し掛かる。
確かに『可愛い』などと言う年齢は過ぎたのだ、俺が言ったのもその解釈だった。
だが、結衣はその言葉を待っていたのだと思う。
俺に『可愛い』と言って欲しかったのだと。


「あんたは俺の自慢の妻だから、可愛くないわけがないでしょ」
「でも家康はもう私は可愛いっていう歳じゃないって」
「娘達と同じ意味での可愛いは無理がある、でも…あんたの可愛さはそれじゃない」


俺は結衣をこちらに向かせ、額に優しく口づけた。
すると、少しだけ瞳を輝かせた結衣。
ほら、そんな所が……俺の心を疼かせるんだよ。


「笑ってる顔も、怒ってる顔も、素直な所も、いつまで経っても初々しい反応も……全部可愛い」
「っ……」
「そうやって、照れて口篭るのも可愛い」
「家康っ……」
「名前を呼ぶ声も可愛い」
「も、もう解ったから!」


頬を染め、必死に俺を止める姿も。
結衣の可愛い所なんて、無限にあるのだから。
全てが可愛く見えるのは、惚れた弱みかもしれない。
確かに娘達も可愛いけれど……

『女』として可愛いと思えるのはあんただけだ、結衣。



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