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【イケメン戦国】花紅柳緑𑁍𓏸𓈒

第5章 愛い花 / 徳川家康




「どうしたの」
「かあ様からお届け物でーすっ」
「でーすっ」
「え、何を預かってきたの?」


小さな手から小さな紙切れを受け取る。
それを開いてみて……俺は目を見開いた。
三つ葉、いや……四つ葉の『くろーばー』。
三つ葉だったのを、俺が無理やり葉をくっつけ四つ葉にして、結衣に渡したものだ。

『四つ葉のくろーばー』は幸せの証。
なかなかそれを見つけられなかった結衣に、四つ葉がないなら作ればいいと、俺は言って渡した。
結衣はそれを栞にして持っていたようだ。
そして……その栞が、今俺が受け取った紙切れの中に入っていた。


「なんでこれを……」
「かあ様から伝言でーすっ」
「でーすっ」
「何を言伝ってきたの?」
「なんだっけ……なんとかで待ってますって言ってたよ!」
「何とかって…一番重要な部分を忘れたでしょ」


娘達の話を聞き、俺は苦笑してしまった。
『なんとか』と言うのはひとつしかないと、気づいたからだ。
それはきっと、この三つ葉を摘んだ所。








​─────俺と結衣が結ばれた、花畑








(……居た)


娘達を女中に任せ、急いでその花畑に向かってみれば、そこはあの日のように色とりどりの花が咲き乱れていた。
つんと、花と草の匂いがする中……
結衣はぽつんと独りで空を見上げていた。

小さな背中、子を産んでも全く変わらないその姿は、あの日の結衣を彷彿させる。
『家康がすき』と言った、可愛い結衣。
可愛いのは今でも変わらないし、愛しい気持ちも変わっていない。
変わったことがあるとするならば……

愛が成長した、という事だろうか。


「……結衣」
「っ」


俺がそっと近づき、後ろから抱き締めれば、結衣は大袈裟なまでにビクリと体を震わせた。
顔を見れば、口がへの字に曲がっている。
これはまだ怒ってるな、絶対。


「私、まだ許した訳じゃないんだからね」
「うん、知ってる」
「家康が言ったこと、怒ってるんだからね」
「うん、でもやっと謝る機会が出来た」


俺は結衣の肩に顔を埋め……
天邪鬼な性格を押し込め、精一杯素直になる。




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