第7章 ラプンツェル…妖精の物語♥️
残った美和とリュートの二人は木の根元にもたれ、並んで座っていた。
遠くから野犬の遠吠えが聞こえては返す者も居ない。
虫の音が耳元で弾け小さな合唱隊を作る、そんな静かな夜だった。
「僕としてはね。 きみとは親しいし、はなればなれになるのは寂しいんだけどな」
膝を抱えている美和の顔をリュートが覗き込む。
合わなければ群れから離れて、また新たな仲間の所に行くだけ。
そんな者が多い妖精のなかで、リュートと美和は生まれた時からこの地に住んでいた。
「ワタシだって寂しいデスけど。 ここが壊されるのは、もっと嫌なのデス」
「………分からないよ。 きちんとした理由を話してくれないかな? きみの元の両親を死なせたのもまた、人間じゃないか」
そう訊かれると美和は困ってしまった。
それはリュートの言うとおりだった。
美和の妖精の親。
夜中に森を歩いていて、獣と間違えた人間に鉄砲で撃たれたせいで、彼らは命を落とした。
妖精の親とは主に育ての者を指す。
それは男女でなくとも構わない。
二人が祈りをこめた儀式によって花の蕾から、新たな妖精は生まれる。
妖精の子供らは生まれつき歩いて言葉を話した。
この世界の理を教え、自分らが持つすべての知恵を授けてから、親は自然に息絶える。
美和の親が死んだのはその前の出来事。
一人ぼっちになった彼女は直後、別の優しい人間に拾われたのだった。