第7章 ラプンツェル…妖精の物語♥️
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満月の煌々と照りかがやく銀色が、闇夜の森を明るく染め上げる。
ここは人の住まう森よりも一層奥深く。
数十人の近隣に住まう妖精たちが、大きな木の下に集まっていた。
「ねえ、最近。 僕たちの住みかは壊されていくばかりだ。 そうは思わないかい?」
口を開いたのは淡い金色の髪をもつ少年だった。
妖精たちは一様に、少年か少女の外観をしており、薄く光る絹のような衣を身に着けている以外は人の姿と大差はない。
「人間がここに住みつき始めてからだ。 東の森なんて、もう手当たり次第に木を切られ、花畑も荒らされてしまった」
「………燃やしちゃおっか」
当初の妖精の声に、みなの視線が注がれた。
元々、それ程土地に頓着せず、自由な気質の彼らは「そうだなあ」と考え始める。
その中にいた美和が慌てて立ち上がった。
「リュート待って。 そしたら残りの、今、生きている植物や、動物…人間たちはどうなるんデショ?」
「一旦壊してしまえば、新たな生態系が生まれるからね。 僕らにはそれを待つ寿命があるのだし」
リュートと呼ばれた金髪の妖精は事もなげに言う。
美和が彼と周囲の仲間を見渡した。
「ダカラといって、寿命の短い動物たちや人間を見殺しにするのデスカ?」
妖精たちがざわざわとささやき、つかみどころのない表情で互いの顔を見合わせた。
ほう、と息を小さく吐いたリュートがもの思わしげに美和の前に進み出る。
「美和。 所詮、僕たちと人間は相容れないんだよ。 彼らは貪欲で傲慢な生き物さ」
「そんなことはありまセン! 現にワタシを育ててくれたのは」
「死んだ両親の代わりにきみを育ててくれたのは、人間だっていうんでしょ? でも、それはもう300年前の話で、確かにあの頃、僕たちと人は仲が良かったけど………今はもう、ね」
うぐ、と美和が黙り込み、その場で俯く。