第7章 ラプンツェル…妖精の物語♥️
森の一軒家に、一人の女の子の妖精が住んでいた。
「らん、らん、ららん♪」
鼻歌交じりで居間の掃除をする。
背伸びをして壁のすすを払っていたところ。
ガチャ、ガチャン!
「あえっ!?」
勢いあまり、飾り棚にある花びんに当たった。
「あうう………またデスか」
皿を洗えば皿が割れるし。
床を拭けばバケツがひっくり返るし。
床に飛び散った花びんの残骸を眺め、ふうとため息をつく。
ツインテールにメイドドレスを身に付けた、彼女の名は美和という。
小柄で、少女といっても差し支えない容貌の妖精であった。
「みんなの所なら、こんなことをせずに済みましたのデショウねえ………」
一応は妖精だけあって、この花瓶が土から出来ているならば、元どおりの形に復元できる。
けれど今いる場所は自然の恩恵が少なく、美和が使える力も限られていた。
箒で集めた破片の一つを拾い上げ、美和は可憐な朱色の唇を尖らせた。
そうしつつ、彼女はあの夜の出来事を頭に思い浮かべてみる。