第6章 眠れる森の美女…103年後
城の門を抜けてからしばらく。
ひたすら感慨深く黙り込んでいた姫は、ゆく道の辺りを見回していた。
約100年ぶりの民家や商店や人など、目にする何もかもが物珍しく、しまいに小さく歓声をあげては喜んだ。
「王子様、今からどこへ行くのですか?」
彼に聞いてみる。
「何だよ。 いきなりかしこまりやがって」
口調は皮肉めいて荒っぽくも、優しい彼の声だった。
遠慮がちにつかまっていた彼の背中から、そろそろと前の方に腕を回してみる。
自然と顔がにやけた。
「取りあえず、城からなるたけ離れてから宿を探す。 姫さん拾って俺一人とは事情が違っちまったからなあ………そこで色々調べて決めるか。 あと、俺はもう王子じゃねえからな」
それを聞き、姫は彼の負担になったのかと思い焦って言った。
「私、外で寝ても全然構わないわ。 だって私も、もう姫じゃないもの」
「ふーん、以前もさっきも思ったけど……あんたって案外、逞しいのな。 了解。 俺の寝心地がいいかどうかは知んねえけど」
「えっ」
姫の頬がぼっと熱くなり、あやうくハルカから手を離しかけた。
後ろに倒れそうな彼女の上半身を慌てて支えた彼が姫の真っ赤な顔を見、
「ぷっ」
と、含み笑いを漏らした。