第6章 眠れる森の美女…103年後
ハルカの、彼の胸の上に顔をつけていた姫は感動していた。
この大きさや感触も覚えている。
彼と一緒に過ごしていた際の、いばらの城での柔らかな空気の匂い。
そんなものまで鮮明に、まざまざと脳裏によみがえってきた。
あれは夢ではなかったのだと思うと姫は言葉が出なかった。
ぽん、と頭を軽くたたかれ我に返る。
「んじゃ、とっとと行くぞ。 姫さん連れてるとこ見付かってやばいのには変わんねえ」
素早く立ち上がったハルカが馬に乗り、ごしごしと袖で目を拭っている彼女に手を差し出した。
「………はい!」
きゅっと表情を引き締め、姫がたどたどしく後ろに座る。
そうしてハルカの背中と腰の間につかまった彼女はようやく笑顔になった。
「行ってきます! お父さま、お母さま」
元気よく言い、小さくなっていく両親に向かって大きく手を振ったのだった。