第6章 眠れる森の美女…103年後
(私は間違ったのに。 恩知らずでひどい言葉を彼に投げつけたのに)
けれども王子様なら、きっとそれは嘘じゃない。 ためらわず真っすぐ伸ばされた腕がそれを示していた。
彼の優しさを思うと胸がつまった。
つっかえながらも彼に応える。
「あっ、ありがとう!! お父さま…お母さま、先立つ不幸をお許し下さい」
姫は迷いもせず手すりに足をかけ、飛び降りた。
「オーロラ!」と、夫人の声が辺りに響く。
落ちてゆく、その瞬間に、姫の体が一瞬ふわりと空に浮いた。
浮いて、彼女の衣服をつまんでいた何羽かの鳥たちが支えきれず………やはり姫は下に落ちた。
「きゃあっ!」
「うわいてっ」
衝撃が和らぎ、倒れながらも無事彼女を受け止めたハルカは、彼女を抱えたまま地面に仰向けになってホッと息をついた。
「先立つ前提かよ………まあ、でも。 本音言うと。 姫さん降ってくるんなら、俺もどっちでもいいわ」
彼の手のひらが姫の背中を撫でていた。
上階では姫の両親が心から安堵した表情で二人を見守っていた。
「良かった良かった。 間に合って」
「共に参ります。 よくよく考えれば魔法が解けた今、私たちは姫様のしもべ」
「いばらのお城からご両親と追ってきました」
あとに一緒に降りてきた鳥たちが彼らの上で口々にさえずっている。
「ふはっ、お前らか………」