第6章 眠れる森の美女…103年後
………な、何かしら? でも。
(私の鳥があんなに懐いているわ………?)
元々警戒心が強く、普通の人間に対しては、彼らは滅多に心を許さないはずだ。
こんな鳥を今まで見たことがなかった。
「彼らから話は聞いているわ」
背後の母の声に振り返る。
意外にも、夫人は姫に柔らかな笑みを向けていた。
「そうするなり、うちへ戻るなり。 貴女の後悔のないよう」
「?………けれど、城に戻ったら、そしたらお母さまたちに迷惑がかかってしまう」
いばら城から近隣である、この国とこじれてしまう。 それは良くないことだと姫もよく分かっていた。
「………おい、姫さん」
大声を出したハルカが姫に向かって呼びかける。
「………?」
彼女は注意深く耳をそばだてた。
「こいつがピーチクうるせえ。 よく分かんねえがな、兄貴の本性に気付いたんなら、お前は両親と城へ戻れ」
(王の、本性………?)
我知らず、姫は夢中で階段を降りていた。
「まっ………待って…貴方、お願い、待って!!」
木で組み立てられた階段はまだ不安定で、足をつけるたびに軋んだ音がした。
それでも姫は駆け降りた。
なぜだか彼女の頭の中では、彼の声で別の言葉が聞こえていたのだ。
奪われた分は俺が与えるから────