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大人のおとぎ話 [ガチパロ]

第6章 眠れる森の美女…103年後




われらしもべたちの世界において。

姫が生まれた時のことは語り伝えられている。
裕福な国と優しい両親の元に生まれ、皆に祝福されたのだと。
次々に訪ねる魔女から数えきれない贈り物を貰った稀有な姫であると。


13番目の魔女は話していたという。

『皆に愛されたこの子なら、100年も待つのなら、彼女は世界一幸福な姫にならなければならないわ』

そうして姫の護りとして自分たちが作られたと云われていた。


鳥は口を開いた。

「姫様。 実は弟王子様こそは」

言いかけて、トントンとせわしなく廊下に続くドアをノックする音。

「オーロラ。 そちらに居て?」

「………お、お母さま!?」

言うが早いかガチャガチャと鍵が開けられ、いばら城の母………品のよさげな夫人が姫に駆け寄ってきた。

「ああ、良かった。 貴女に会いに来ても、いつも門前払いで」

その後について彼女の父と、給仕係の人間も戸口に立っていた。

「お父さままで………門前払いって…一体?」

「貴女の婚約者の、今は王様ね。 『今、彼女は大切な時期ですから』と。 それなら尚更と言っても、聞き入れてくれなくって。 だけどまさか、こんな所に閉じ込められているなんて」

ぐるりと室内を一瞥した夫人がもの思わしげな面持ちで姫の手を握った。

「お前の言葉を信じて城を出したが、うちの者に探らせると王の……ここでの評判はあまり良くないと聞いた。 そしたらほら、そこの鳥たち…亡き魔女のしもべたちに呼ばれたんだよ。 まだ間に合うから、姫を助けて欲しいとね」

姫がちら、と給仕係に目をやり、彼が恭しく父に会釈を返した。

いばら城の王だった頃。
父は人格者として立派な人間だった。
その威厳は今も健在なようだ。



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