第6章 眠れる森の美女…103年後
結婚式を目前に控えて今さらだと思う。
たとえそうでも、彼女は彼と結婚したいという気はもうなかった。
『ねえ…今度さ。 両方で楽しむのってどう?』
極めつけで、彼のあの発言で姫の目が覚めた。
愛しい人との営み。
そのはずの行為に愛などなかったのだと彼女は思い知らされた。
あれから、彼のやり方が段々と変化してきた。
口や後ろも当然のようにせがみ、結局は押さえつけられて欲望の捌け口となる。
今まで眠っていた自分を凌辱してきた男性の数々。
(あれは丁度、そんな感じだわ)
『口まんこちゃん』
あんな、下劣な言葉で人に行為を強いるなんて。
彼女は膝の上でぐっと拳を握った。
「ん………ちょっと待って」
はた、と姫は考え込んだ。
あの声音と話し方。
眠っていた時の、彼女のおぼろげな記憶の中でも、最悪な思い出の男性と王は酷似していた。
「え…そうしたら……」
ぞわぞわと自分の背中に悪寒が走る。
もしもそうなら。
今まで彼に対し、恐ろしく勘違いをしていたということだ。 そう気付いた。