第5章 眠れる森の美女…102年後♥️♥️
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祝いごとで浮き立った城内では毎夜、宴会が続いていた。
「はっはっは。 目出度い目出度い!!」
「よもや突然現れた、あのように豊かな城の姫と縁が出来ようとは。 王子、よくやった!」
王様や大臣は口々に兄王子と美しく控えめなオーロラ姫を称えた。
「いいえ、まだこれからです。 しかしこれを機に、私は益々自国を盛り立ててみせましょう」
柔らかに微笑むイズミが視線を姫へと向け、彼女も笑顔で頷いてみせた。
城へ招かれてから幾日が経って、ここでの生活も少し慣れてきた。
普通の人間より少しばかりよく眠るぐらいで。
姫は思い出していた。
あの魔法が解けた時の事を。
ちょうど棺の傍で目覚めていた姫は、麗しい見目の兄王子を一目見て、この人だと思ったのだ。
意識はなくともおぼろげに覚えていた。
乱暴に自分を扱う男性が絶えない中で、いつも優しく触れて、髪を梳いてくれた王子様。
記憶の中の彼の手の大きさや背格好は兄王子とそっくりだった。
父母と再会を果たし、王子と連れ立って事情を話した所、もちろん彼らは大喜びで姫を送り出した。
物思いにふけっていた宴会の最中、イズミがテーブルの上で姫に手を重ねた。
「オーロラ姫。 連日疲れるだろう? ここはもういいから先に湯浴みを」
思いやりに満ちた姿の良い王子様。
けれどなぜだろう?
「いえ、私も早くここに慣れたいですから」
「ん? きみみたいな婚前の女性が、こんな騒がしい場に長居するのは良くないよ」
そうなのかしら。 と思うも、握られた手に力が込められ言葉を飲み込んでしまう。
「………はい」
彼はこういう時、表情と言葉にそぐわず命令をするのだと姫は感じていた。
それに対して、自分が萎縮してまうのはなぜだろう?