第5章 眠れる森の美女…102年後♥️♥️
かくしていばらの城は生まれ変わり、近隣の人々からはバラ城と呼ばれて受け入れられた。
彼女の両親は控えめな人物らしく、今さら金銭にものをいわせて周りを支配下におこうなどとは考えなかった。
今後は広い土地の領主として、穏やかに暮らすらしい。
「色々上手く進んで、近々兄王の戴冠式、次いで姫との結婚式だ。 元々俺には王になる野心もなかった。 終わりよければってやつだ」
思えば、途中からゲームなんてどうでもよくなっていたことにハルカは気付いた。
鳥は何でもないよう取りつくろう彼にどんな言葉をかけていいか分からなかった。
「………王子様は、これからどうされるのですか」
ん、と視線を空にさまよわせ、ハルカが床に足をつけて立ち上がる。
「さあなあ。 身軽になったし、どっか旅にでも出てみるか。 心配要らねえよ、お前はもう少し元気になったら、もとの場所に返しに行く」
弟王子が部屋を出ていくのを鳥が見送った。
休んでいた彼は時おり、ここの城の人間の声を耳にしていた。
『穏やかな弟王子とは違い兄王子は恐ろしいお方だ』
『逆らうと何をされるか………嘘でも兄王子側につかないと』
自分を脅かし、ためらいもせず殺そうとした兄王子。
彼は二年近くもの間、われらの姫を欲望の対象としてのみ扱い続けた。
(姫様。 私たちがあの時、うっかり口を滑らせたせいでこんなことに………)
すぐにでも姫と会って誤解を解きたかった。
だが怪我のせいでそれも叶わず、鳥はうなだれた。