第5章 眠れる森の美女…102年後♥️♥️
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治療のため片羽を小枝で固定され、体に布を巻かれた鳥は部屋の窓際で沈んでいた。
弟王子は自室のソファーに寝ころがり天井を眺めていた。
瀕死の鳥を城に連れて帰り、塗り薬が効いたのか、程なくして鳥は話せるようになった。
「………とにかく、鶏が先か卵が先か。 あの紋様がまんま原因だったと」
事の顛末を聞いていたハルカが彼の話に耳を傾けていた。
姫と城にかけられた呪いのことである。
「それがそうとも言えないのです。 あれは『異なる相手』が傍にいると強く反応しますから。 そもそも本来の相手にとっては呪いではありません。 最初から、姫様の貞節に触れたのが弟王子様ならば、姫様は受け入れたはずです。 そしたら同時にお城も」
「………それはどうだか」
ハルカは声に出さずに笑った。
今の兄と姫を見る限り、とてもそうは思えなかったからだ。
「しかし弟王子様は呪いもかき消す程、姫様に献身的に尽くされました」
「お前たちが俺にそれを教えなかったのはなぜだ?」
「口外すると悪い魔女が元かけた魔法自体が封印され、お城は永遠に閉じ込められたままになっていたでしょう………」
しょんぼりしている鳥を責める気もなかった。
兄王子が手を回して他の男から姫を遠ざけていたのは知っていた。
そうやって彼も姫を守っていたのだ。
(俺は結局、兄貴を止めることをしなかったのだから)
ハルカは鳥に声をかけた。
「そうか。 なら、気にすんな。 あそこの城の………姫さんの両親も生き返った。 思ってたより姫さんも幸せそうだしな」
「王子様………」