第5章 眠れる森の美女…102年後♥️♥️
その方向へと歩を進めるハルカの足どりは重かった。
彼は棺の近くで、兄と姫が花の地面の上で抱き合っているのを見た。
花びらが舞い、満開のバラに囲まれてむつみ合う。 そんな背景がぴったりな似合いの男女である。
「ああっ。 あ、貴方が…ずっと、私を…見守って、くださっていた。 なんて素敵な、王子様」
想像していたより意思の強そうな、輪郭の大きな鳶色の瞳だった。
しばらく彼女から目が離せなかった。
起きている姫の顔を初めて見たハルカはようやく、自分の胸がえぐられるような痛みに気付いた。
「オーロラ姫………この時を夢見ていたよ」
イズミが動き始め、下敷きになっている姫の瞳がうるんでは涙を落とした。
「姫様は思い違いを」
「王子様。 ああ、何てこと」
鳥たちが口々に話している。
それ以上二人を見ていられず、ハルカは無言で踵を返し城へと戻っていった。