第4章 眠れる森の美女…101年後♥️♥️
兄弟喧嘩という年ではない。
もしもそんなことになれば、諸々を巻き込み決着がつくまでやり合う羽目になるだろう、とハルカには分かっていた。
それだから、今回のゲームに乗ったのだ。
あの時は誰も傷付かずに済むならと思ったものの。
(負ければ兄貴にコイツが傷付けられるのかな)
ふとそう気付いた。
姫を泉の下に降ろし、すると以前と同様、慣れた様子で鳥たちが羽やくちばしで彼女の身を整え始める。
「口もすすがせろよ」
「はい」
「慣れていますから」
「お任せください」
それは鳥に任せ、脱がせた服の染みを傍の小川で洗う。
「慣れてるのか………」
彼は複雑な気分になりつつも姫の体を棺に戻した。
手ぐしで彼女の髪を梳きながら鳥に話しかけた。
「なあ。 コイツって、起きることあんのか」
「月に二度ぐらいは」
「ここ一年は」
間をおいて。
「まだ完全に目覚めていらっしゃらないのです」
と答えた。
「そのうち完全に覚めるってか」
その後に呪いを解いてモノにすればいいのか? ハルカは考え姫を見つめた。
いや。 呪いさえ解ければ城は元に戻ると聞いた。
たとえ意識がなくても構わないんだろう。
「それなら、コイツの気持ちはどうなる………待て」
ヒヨコみたいに目覚めた時に居た奴に懐くとか。 妙なことを思い付いたハルカは小さく吹いた。
「王子様?」
「あり得る」
身綺麗になりハルカに身を任せている姫はどこか心地好さげな表情をしていた。
それはとてつもなく無防備で、加えていえばやはりトボケている。