第4章 眠れる森の美女…101年後♥️♥️
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そんな寝ぼすけな姫の元に、ある日馬の蹄とともに、二人の若い男の声が近付いてきた。
「この辺りか。 確かにバラの花だらけだな………以前はもっとひどかったらしい。 コレじゃ誰も来れなかったわけだ」
「そうだね。 けどさ、いばら城の中には貴重な絵画や宝飾品ってお宝がたんまりあるとはもっぱらの噂だから」
並んで話している二人は近隣に別の国を構える王子たちであった。
「で、それも美女ってか……ここのお姫様の呪いを解いたら手に入るって? ふん、眉唾物だな」
黒い髪に同じ色の瞳。
弟王子には多少粗野な言葉使いと皮肉めいた表情が垣間みえた。
「先刻走らせた使いが、女性が眠っているのをハッキリ見てきたらしいよ。 しかし、何でもその姫にはどうしようも手が出せないとは、近くの村でも有名な話。 100年の眠りから覚めた美女ってさ。 ハルカ、お前も興味あるだろ?」
薄茶色の髪色に柔らかな瞳。
柔和な印象の兄王子は、女性とみまごうかのような薄桃の唇を緩め、上品に微笑んでみせた。
一見真逆な二人だが、どちらも人目をひく美丈夫である。
ハルカと呼ばれた弟王子がふと馬の脚を止めた。
「………で、アレが噂の鋼鉄の処女か?」
遠くをみていた目つきのハルカが、呆れたように兄王子に話しかける。
「んん? ここからじゃよく見えないな」
目をすがめた兄王子にはぼやけた塊しか見えない。
馬を進ませ二人がその場所へと近付いていった。
「こ、これは………」
「美女とやらの尻だな?」
拓けた場所で馬を止めた彼らは眼前の光景に顔を見合わせた。
そこには花々に囲まれたガラスの棺………に入る前に力尽き、上半身だけ棺に突っ伏している女性がいた。