第3章 みにくいあひるの子…森の家で♥️♥️
「な、何を…っグワッグワッ!!」
他愛ない、などとでも言いたげに琥牙の口許が歪んでいた。
母アヒルは、例え相手が死んでも一人きりの伴侶を愛し抜くというオオカミの習性を見誤ったのだ。
そんな自分の所有物である、木こりの肌に触れた。
それだけで彼にとって、もはや母アヒルは抹殺すべき敵に過ぎなくなった。
「雪牙ー? これ全部捕まえて括っときたいんだけど。 で、明日市場に売りに行こうよ」
そしてなるべく残酷な方法を思い付き、雪牙へ提案した。
「おっ、兄ちゃん。 いい考えだな! そしたら全部吊るして表に出しとこう」
生きたまま市場に並べられ屠殺される。
その言葉を聞いたアヒルたちは口々に悲鳴を上げた。
「ギャー!」
「グワッ」
「ピイイ!!」
が、二人を前になす術はなかった。
両脚を縄で結られたアヒルが庭先の洗濯物干しにズラリと並んだ。
それを琥牙は満足そうに見渡す。
「うーん、なかなかに豊作だねえ。 うるさいし、さっきの弟さんとこに置いとこうか。 お裾分けってことで」
とはいえ、彼はせっかくの木こりとの再会を彼らのわめき声で邪魔されたくなかった。
「じゃ、俺運んどく! 腹減ったから、一羽ぐらい食ってもいいよなっ? ははっ、里ではこんなご馳走、食えなかったんだよな!」
目の前の餌に舌なめずりしつつ、雪牙はアヒルをくくったロープの両端を結び、軽々と肩に担いだ。
足取り軽く少年が元来た道を駆けていく。
再びドア口から家の中を伺う琥牙が、ベッドの縁に座る木こりに話しかけた。
「真弥、大丈夫?」
ぱちぱちまばたきを繰り返す木こりは事の事態を受け止めきれていない様子だった。
「………うん。 あ、ありがとう」