第3章 みにくいあひるの子…森の家で♥️♥️
「執着や独占欲は仕方ないんだよ。 俺たちはオオカミでもあるし」
くいくい、と服の裾を引っ張られ、そんな彼の心中を察しているかのように雪牙が琥牙を見上げる。
「けどさ、あの人は泣いてるよ」
雪牙を見、次に震えながら泣いている木こりに改めて目を向けた。
ようやく落ち着いた琥牙が一瞬目を閉じて、雪牙に話しかけた。
「………うん、ありがとう。 雪牙、手伝ってくれる?」
「任せろ!」
ばふっとオオカミ姿に変わった雪牙がアヒルたちに向かって躍りかかっていく。
オオカミと水鳥。
地の利もあるが、アヒルが何羽いようと当然のことながら、話にならなかった。
ぶちぶちアヒルの羽をむしり暴れる雪牙と逃げ回るアヒルたち。
阿鼻叫喚の中、琥牙が木こりに近付こうとした。
木こりの前にはかつての母アヒルが立ちはだかっていた。
「随分と………見違えたが」
母アヒルは知っていた。
いくらオオカミだろうと体が成長しようとも、目の前の生物は自分に逆らった事はない。
「そうだろうね」
元息子は愚直で意気地無しな性格であると。
「捨てられてたお前を拾ってやった恩を忘れたのか?」
そしてアヒルは、義理がたい彼は元母の自分には手を出さないだろう、と踏んでいた。
「忘れてないね。 連れていかれてすぐ、こきつかわれたり兄弟にいじめられたり、結構散々な扱いで」
「………」
しかし淡々と話す琥牙は冷静で冷たく、まるで他人事のように母アヒルを突き放した。
彼の目の奥。
「そのお陰で、あんまり寂しいとか考えずに済んだかなあって。 それは置いてもね。 真弥に手を出すんならおれは容赦しないから」
静かに燃える彼の怒りに母アヒルが気付いた時は遅かった。
片腕を伸ばした琥牙が、目にも止まらぬ速さで母アヒルの首をつかんだ。