第2章 みにくいあひるの子…旅の途中で
『両方可愛くてキレイだし!』
確か木こりが言っていた。
少なくともこの姿は可愛くないだろう。
「えええ、やだよう………こんなの、真弥も弟もおれだって気付かないでしょ」
そして服を着るためにまた人に戻って自分の体を見下ろす。
「なんか、コレも無駄にデカいし。 こんなんじゃ真弥を傷付けちゃうよ」
オオカミは弱りきってその場にしゃがみこんでしまった。
「ふっ…これはこれは、珍しいやつだ。 普通の男ならば誰でも恵体に憧れるものだろう?」
「おれの憧れなんてないよ」
『オオカミさん、頑張ったんだね!!』
ただそんな風に、ちょっと木こりに見直して欲しかっただけだ。
「兄ちゃん、いいと思うけどな! 途中の奴らが皆アイサツしてただろ? 弱い奴はここでは無視されるから」
「………」
黙りこくるオオカミに縁側の二人が顔を見合わせる。
「お前はどちらにしろ、そのように成長する。 それが年相応の本来の姿なのだから。 まあ、以前の姿に戻りたいというのなら、せっかく手に入れた強さも寿命も捨てることになるが」
「本来のおれ………」
それは自分が探していたものだ。
「それなのに、その女人は今のお前を否定するような人間なのか?」
供牙はオオカミの考えなどお見通しのようだった。
(それは分からない。 でも)
オオカミは気付いていた。
自分の目の前にいる二人を好きになりかけていること。
自分自身をさらけ出しても『それが許されるのか』なんて考える必要もない。
仲間とは。
ごく自然に、目線を同じに合わせることを、容易くやってのける。
それはオオカミにとって新鮮な驚きだった。