第10章 マッチ売りの少女…12月31日♥
「……もちろんだよ。 でも、こっちは僕が家で作ったんだ。 サラちゃんに食べて欲しくて、一生懸命焼いたんだよお」
まるで縫い付けられたかのように、青年は彼女の顔から目が離せなかった。
勢いで口から出た嘘だったが、サラは嬉しそうにうなずくと、今度はフォークを使わずに手で
「いっ、いただきます!!」
とかぶりつく。
その様子を見守っていた青年に気付いて、サラは膨らんでいた頬を急いで動かし、鶏肉を慌てて飲み込んだ。
「こっちも美味しいです!」
青年はホッとしたような、照れたような笑みを浮かべた。
「ありがとう、ホーリーさん! ……あの、ええとお名前……ひ、ヒイラギの名前は、どうでしょうか…?」
「……んんー? ホーリー? 僕?」
青年は片眉をあげてケーキの飾りを手に取った。
「僕の名前? このギザギザの葉っぱ?」
「ごちそうを出してくれて…奇跡を起こせるなんて、聖者の意味合いにぴったりだと思ったんです」
「聖者………」
「……違うんですか? えっと……じゃあ、て、天使様?」
おずおずと尋ねるサラに、彼は引きつった顔で無理やり笑いを浮かべる。
サラはしばらく黙って青年を見上げていたが、やがて何かに気づいたように、はっと息を飲むと、
「か、神様………」
両手のひらを口に当て、潤んだ瞳で彼を見た。
「は?」
「それなら納得がいきます! お料理が上手だし、私の色々なことを知っているし。 あ、そうだわ、きっとそうです!」
「………」
(神って料理出来たっけ?)
「……違いましたか?」
期待に満ちた目で見つめられて青年は苦笑した。