第10章 マッチ売りの少女…12月31日♥
(うふふふ…驚いてるねえ)
青年は内心ほくそ笑んでいた。
何にしろ、この子は単純なのか馬鹿なのか。 異様にほだされやすいたちなのだ。
彼がこの少女をお気に入りで仕方がない理由─────彼自身、冥界で何度も考えていたことである。
栗色の髪と同じ色、丸く大きな瞳の愛らしい少女。
実際の歳はじきに15にとどく。
それなのにもっと幼く見えるのは、同い年の女性とくらべて彼女が未発達だからだ。
ほんの数年前までは彼女の髪はもっと艶やかだったし、頬は柔らかそうに丸みを帯びていた。
薄い肌着から伸びている、小枝のように細い腕も栄養不足によるものだった。
しかしそんなサラの外見も青年からすると魅力でしかない。
ずっとずっと長い間、映像でしか会えなかった女の子が、動いて自分に反応してくれているのだ────彼女が一瞬にして絶望に陥るさまは、まったく素晴らしいのひと言だ。
(さあ、どうやってこの子をがっかりさせてやろうか。 自暴自棄子になったこの子は、どんな悪い子になるんだろう?)
青年とって、胸の奥底からあふれ出るような期待と喜びを抑えることは難しかった。