第10章 マッチ売りの少女…12月31日♥
「────サラちゃん、ほら見てよ」
青年の声に我に返ると、暖炉の暖かな光が足元を照らしていた。
「え?…わ、わあ…っ」
サラは思わず声をあげた。
彼女の視界に飛び込んできたのは、背後に輝く明るい炎を背景に、テーブル上に華やかに飾り立てられた巨大なケーキだった。
「美味しそうでしょお?」
傍に立っていた青年が言い、手に持っていたマッチの燃えさしを暖炉に放る。
丸いケーキの上に、木の切り株を思わせる形をしたケーキが重なっている。
白いクリームが表面を覆い尽くし、そこに散りばめられた赤い果物や小さなお菓子は、まるでプレゼントの箱の飾り付けのように輝いていた。
こんなケーキを目にしたのは初めてだった。
「………私、こんな見事なケーキを今まで見たことがないわ。 すごくきれい。 これ、どうしたの?」
赤々と燃える暖炉の炎も、冷え切っていたサラの手足を温めてくれている。
「さあ、クリームをひと口すくってみてよ。 甘くって美味しいよお」
「これを? え…で、でも……」
そういえば朝から何も食べていなかったことに気付いた。
サラは躊躇して、突然目の前に現れたケーキと、その背後に立って微笑む青年を交互に見た。