• テキストサイズ

大人のおとぎ話 [ガチパロ]

第10章 マッチ売りの少女…12月31日♥




「────サラちゃん、ほら見てよ」

青年の声に我に返ると、暖炉の暖かな光が足元を照らしていた。

「え?…わ、わあ…っ」

サラは思わず声をあげた。

彼女の視界に飛び込んできたのは、背後に輝く明るい炎を背景に、テーブル上に華やかに飾り立てられた巨大なケーキだった。

「美味しそうでしょお?」

傍に立っていた青年が言い、手に持っていたマッチの燃えさしを暖炉に放る。

丸いケーキの上に、木の切り株を思わせる形をしたケーキが重なっている。
白いクリームが表面を覆い尽くし、そこに散りばめられた赤い果物や小さなお菓子は、まるでプレゼントの箱の飾り付けのように輝いていた。

こんなケーキを目にしたのは初めてだった。

「………私、こんな見事なケーキを今まで見たことがないわ。 すごくきれい。 これ、どうしたの?」

赤々と燃える暖炉の炎も、冷え切っていたサラの手足を温めてくれている。

「さあ、クリームをひと口すくってみてよ。 甘くって美味しいよお」

「これを? え…で、でも……」

そういえば朝から何も食べていなかったことに気付いた。
サラは躊躇して、突然目の前に現れたケーキと、その背後に立って微笑む青年を交互に見た。




/ 220ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp