第10章 マッチ売りの少女…12月31日♥
長い時の間に少年は学習した。
この少女のこと
宝玉の世界のこと
自分が今いる世界のこと
過去や未来、自分に出来ること
そして自分が何者であるか
「こんな調子でキミは死んじゃうんだよお。 かわいいのに可哀想だねえ………」
少年は笑いながら父親の罵声と少女の悲鳴にうっとりと聴き入っていた。
「キミは良い子だから、天国に行くんだよねえ? そしたらもう、会えないのかなああ」
首を傾げようとした少年が体ごと傾き、不服そうに眉を眉をひそめて映像を変えた。
「天国でも地獄でもないここに、来てくれないかなあ。 死神の僕と一緒にいてくれたらなあ ………ま、無理だけどさ」
今度は玉には炎の中で焼け苦しむ人々が映っていた。
断末魔の叫びはうるさいばかりで、少年はつまらなそうにそれを観ていたが、
「あ、そうだ」
何かを思い付いたように目を見開く。
「天国はすぐに生まれ変わってしまうからね。 地獄なら、これからも観れるよねえ? キミに会えるよね。 そしたらキミが悪い子になればいいんだよねええ?」
彼はそう考え付き、また何年かをかけて、少女の元に会いに行く準備を進めた。