第10章 マッチ売りの少女…12月31日♥
一日経ち、十日経ち、一ヶ月が経ち一年が経ち────どれぐらいの時が経ったのか。
『なにか』が居た場所に、不気味な姿の少年が座っていた。
裸の肩はやせていて、その肌は青白い。
頬が痩せこけているせいか、真っ黒な目だけがいやに大きくみえる。
ガリガリと真っ黒な爪を噛み、荒れ放題の彼の髪はもつれて床に流れて垂れていた。
『はあ…今日もあまり売れなかった。 お父さんに叱られてしまう』
透明な玉は変わらない少女の姿を映していた。
肩を落として寒空の中をゆく、みずぼらしい格好の女の子。
「………残念だったねえ? またお父さんに殴られてしまうねえ?」
少年はククク、クスクスと笑い声をあげ、これから彼女の身にに起こることを想像して胸が高鳴った。
あまり覗くと向こうの時が経ってしまうので、少年は細切れにして、大切に大切に少女を観察している。
彼は今まで様々な映像を観たが、ことのほかにこれが気に入っていた。
ややして、
『きゃああっ! やめて、お父さん!!』
どこかの家の中で、悲鳴をあげて逃げる少女は涙を流していた。
彼女を追いつめる中年の男の姿がある。
男の目は虚ろで赤黒い顔色をしており、昼間らしいのにもう酒に酔っている様子だった。
男が振り上げた大きな拳が少女の肩に当たり、小さな叫びとともに、彼女の小さな体は室内の壁まで突き飛ばされた。
最初は驚き
次にショックと痛み
それから徐々に恐怖に変わる少女の表情。
それらがスローモーションのように観ている者の目に焼き付けられる。
「…あああ、たまらない。 かわいい、なんて可愛いんだ」
少年は大きく呟きため息をついた。