第2章 みにくいあひるの子…旅の途中で
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何か月後かのある日、おばあさんはとうとうオオカミに洋服をプレゼントしてくれた。
上等な綿の服だった。
オオカミは洋服を両手で広げ感激した。
「わあ、素敵な洋服だ」
手を後ろに組んだおばあさんがにっと笑みを返した。
「今までよくついて来た。 もういいだろう」
人になって着替えた彼は、おばあさんに今まで世話になったお礼を言い、大喜びで家を飛び出していった。
「苦労したなあ。 崖から登ったり落ちたり岩を運んだり砕いたり潰されたり………もう彼女の弟にも、認めてもらえるかな」
しみじみ過去を振り返り、死ななくてよかったと思う。
彼はふと、手元の包みに視線を移した。
出掛けにおばあさんから頼まれたものだ。
『私の旧友にこれを届けて欲しい。 こないだ行った伊勢の土産だ』
そう言っていた。
ピンクの包装の、和菓子らしきものを手に、まずオオカミは道中のお使いへと急いだ。