第9章 閑話シンデレラ…舞踏会編♥♥
落ち着かなそうに指をテーブルにコンコンと鳴らしていたシンデレラが立ち上がる。
「シンデレラ?」
呼びかけた妹に「出掛け…彼女に会ってくる」ひと言答えて背を向けた。
「ちょっと待ちなさいな。 突然お城に行ったって、一国の姫様があなたに会ってくれる訳ないじゃないの」
姉が呆れて彼の後ろ姿に言葉を被せると、シンデレラは困ったようにその場に所在なさげに立ち尽くした。
「まったくもう………知り合いが勤めてるって言ったじゃない。 私が 一緒に行くわ。 彼女を呼び出す口実に使ったら何とかなるかも知れない。 けれど…きっと姫様に何の用向きで、なんて聞かれるかもねえ?」
「それは心配ない」
「え?」
話しながらシンデレラは玄関先に掛かっていた外出用のジャケットを手に取り、袖を通した。
「俺は彼女の元に忘れ物をしてきたから。 それを伝えてもらえば通してくれるだろう」
「忘れ物?」
「ウム。 アンナが俺を探しに来てくれるかと思っていたが、逆にこうやって訪ねる口実も出来るんだな」
ファサッと前髪を掻き上げ、ぬけぬけと口にしたシンデレラに、「随分と悪知恵が働くのねえ」「まあ、呆れた」と姉たちが苦笑した。