第9章 閑話シンデレラ…舞踏会編♥♥
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日が経ち、舞踏会の夜からもうすぐ一週間になろうとしていた。
妹は先ほどまでシンデレラが臥せっていたテーブルの上に肘をついて座っていた。
その時の彼女の心中は複雑だった。
「姉さんったら。 いくらシンデレラのためでも、突然お城に出掛けるだなんて」
近ごろは寒暖の差がことのほか激しく、それでも日中は爽やかな日差しに恵まれている。
昼食の片付けを終え、妹はお茶を淹れるためのポットをストーブにかけていた。
それが湧くまで熱で揺らめく空気をぼんやりと見つめ、そうしながら日中にここであった姉と弟とでのやり取りを思い返してみる。
────あれからわが弟は、外に出掛けるわけでもなく、家に閉じこもり自室で考えごとをしているか、部屋からふらっと出てきても心ここにあらずといった様子で日々を過ごしていた。
本日のシンデレラは、昼間からダイニングテーブルに突っ伏していた。
窓から差し込む陽光が、彼の透き通る髪を輝かせていた。
「まあ、シンデレラ、熱でもあるの。 もう家に女性を連れ込まなくて四日目よ」
「ホントにねえ。 せっかく舞踏会から連日、お誘いが絶えないというのに」
などと、姉妹が声を掛けても
「大事ない………と言いたいが。 体はむしろその気なんだがな。 どうも食指が動かない」
彼は前方の窓の外を眺めながら、家族としてはどうかという話に対してボソボソと答えるだけであった。
姉妹は彼のわきに立ち、顔を見合わせ、互いに肩をすくめた。
「………アンナ姫」
頭上から降ってきた大義姉の声にシンデレラの背中がピクリと動く。