第9章 閑話シンデレラ…舞踏会編♥♥
シンデレラは動かずにただ、黙って立ち上がり衣服を整える彼女を見ていた。
彼に向かってかがんだアンナはバルコニーにいた時と同様に、囁くように微笑んだ。
「あらためて………素敵な夜をありがとう。 先に行きます」
そうして外に通じる引き戸が静かに閉められ、シンデレラはつい、日ごろ口にしたことのない悪態をついた。
(あんなによがっていたのに? 何度も………)
理解が出来なかった。
ほんの半刻前までは、自分が完璧にイニシアチブをとっていたはずだ。
ただの男と女として愛を交わしたはずだった。
よく分からない何かが自分たちの邪魔をした。
(好きな人ってなんだ? 向こうから誘っておいて)
未だかつて女性に断られたことがなく、しかも今回はかなり気に入りかけた相手だけあって、シンデレラはことのほかに傷付いた。