第9章 閑話シンデレラ…舞踏会編♥♥
シンデレラは押し黙ったアンナを振り向いた。
「………なにか?」
「失礼ながら貴方はあまりそんな風には見えませんでしたから。 口では何とでも言えますし」
「品性の問題です。 貴女こそ、見えないわりに俺の何を見ていると?」
話しかける前から、アンナは不自然なほど滅多に人と目を合わそうとしなかったのにシンデレラは気付いていた。
「………お気付きでしたか?」
「貴女は音や気配にやけに過敏ですし」
「それだけで分かるものです? 今まであまり人には知られずにいたものですから」
若干、声を落としたシンデレラが彼女に向かって言う。
「いえ……貴女が避けたグラス。 あれはアルコール度数が強いもので、最初はわざとなのかとも思いましたが。 貴女がしゃがんだ場所は破片が飛び散った跡で、欠片などは何も無い床でした」
彼女は微かな好意に満ちた笑みを彼に向けた。
「そう………正直に言って、あそこから連れ出していただいて、本当にホッとしました。この場所は音があまりにも多すぎて、少し混乱してしまいましたので………」
なんと言っていいか分からずにシンデレラは無言でいた。
「そうですね。 私はほとんど目が見えていません。 私の病気は進行性のものなので、私が二十歳になる前には完全に光が見えなくなると言われています」
アンナは悲観する様子もなく、指先で髪をなでつつ、柔らかな風に吹かれて心地よさそうに目を細めた。
「踊るのも好きでしたが、もう今年辺りで最後でしょう。 このような場所に来るのも」
「俺でよければ来年もお相手をいたしますが」
シンデレラが彼女の指先をとった。
軽くその手を引き、アンナは彼が踊りに誘っているのだと察した。
「ここで、ですか? 少しばかり暗くありませんか」
「貴女には問題ないはずです。 不安ならこちらに身を預ければいい」