第9章 閑話シンデレラ…舞踏会編♥♥
「俺の身の振り方ひとつで家族が幸せになるのなら、やっと恩返しが出来るというものだろう」
特に悲観するわけでもなくシンデレラはそう受け止めていた。
女性は通常、二十歳前後には嫁ぐ。
それを超えると『何か問題がある売れ残り』として敬遠される世の中である。
姉が一家のために自分の青春をも犠牲にしたのは間違いない。
(………それに、まあ)
横目でチラリと見ると、大皿を抱えんばかりにご馳走に食らいついている小義姉が目に入った。
くくと小さく笑いを洩らしシンデレラが歩を進めた。
情にあつく人間らしい欲を持つ善良な彼女たち。
彼は二人の義姉が純粋に好きだった。
ホールの脇に沿って十歩も歩かないうちにシンデレラに歩み寄った女性が話しかけてきた。
「あ…ああの…っ!?」
女性が話しかけようとした瞬間に、ドレスの裾に躓いて倒れそうになったところを、シンデレラが彼女のウエストを支えて優雅に受け止める。
「気を付けなさい。 美しいキミに触れられるのなら、今宵しばし月の蔭った時に」
踊るような動きで、官能的に眉をひそめ月よりも鋭く見つめる彼の視線に、女性は真っ赤になってふらりと座り込んでしまった。
ファーストペンギン効果というのだろうか。
さりげなくその光景を固唾を飲んで見守っていた女性たちは、一斉にシンデレラの元へと駆け寄った。
それはまるで、あたかも咲き誇る大輪の花に疾走する蝶のごとく。
かつて、実業家である父と遠い異国の美しい女性である母という両親を持ち、また優秀な義姉たちから英才教育を受けたシンデレラ。
彼の豊富な知識から生まれる、巧みな弁舌や相手の感情に沿った相槌は女性たちを深く感動させた。