第9章 閑話シンデレラ…舞踏会編♥♥
「あらお姉様。 じきに昼食の支度をしなければならないわ。 今回はじゃがいもをたくさんいただいたの」
台所のテーブルの上には山ほどの芋が入ったカゴが置かれていた。
シンデレラよりも二つ上の彼女の妹が下ごしらえに精を出している。
(手伝うついでに愚痴でもきいてもらおうかしら)
と、姉もダイニングの椅子に腰を下ろした。
「あの子ったらいつも買い物に行くと、余分な食材や女性を持ち帰ってくるから、困りものよねえ?」
姉はため息混じりに言った。
「ふふっ。 いいのではなくって? シンデレラは本当に優しい子だもの。 病気に伏せっているお母様のために、ほらっ。 これを取り寄せてくれたのよ」
妹が手桶の中に手をつっこみ、そこからジタバタ激しく暴れる大きな物体を掲げた。
「ひいっ!? な、なんなの、そのグロテスクな生き物」
それは灰褐色の甲羅からにゅっと長い首をのばし、無言で姉を睨みつけている………ようにみえる。
「スッポンというものよ。これの生き血や肝は、大層滋養がつくらしいわ。 あの背の低い方の女性は、ちょうど薬屋の娘さんだとかで、シンデレラと店の軒下で目が合ったのですって」
まな板の上でその甲羅をしっかりと押さえ、妹が慣れた手つきで包丁をタアン!と振り下ろした。
その後、血まみれの甲羅をベリベリとはがす光景を目の当たりにしながらも、一家の食卓を支えるために奮闘する妹の逞しさに舌を巻く。
「………目が合った、ねえ」
「それでこんな高級食材が手に入るなら、猪を探しに山にこもって格闘する手間も省けるわ」