第8章 ラプンツェル…少女の物語♥♥
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日が落ちてもマドカは彼の傍で泣いていた。
子供に戻った彼女のことをいじめる者は誰もいなかった。
むしろ立派な身なりの青年の死体と、彼から片時も離れず泣きじゃくる少女の組み合わせは通りがかる人間から好奇と同情を呼んだ。
「誰かから庇い立てをしたのかねえ」
「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」そういった周りの声や手をマドカが振り払っても、「きっとじきに親御さんが来るんだよ」と囁き、彼女たちを遠巻きにして去っていった。
暗くなり、マドカはフリンの手を握ったまま膝を立てて座っていた。
(私が一緒に行けば、フリンは死なずに済んだのかもしれない)
そうしてふと、下から洞を見上げた。
(私をあそこから出そうとして………?)
振り向くと向こうからフリンの所まで、地面には転々と血が落ちていた。
「………痛いのに、怪我してるのにここまで走ってきたの?」
捨てられたと思い込もうとして、死後もぞんざいに扱った父母の分も、マドカはまた涙した。
「ごめんなさい」と何度も謝った。
幼い子供に戻った外見と同じく、彼女から大人の殻が剥がれていった。