第8章 ラプンツェル…少女の物語♥♥
マドカはもう一度梯子を見、そこに向かって思い切り手を伸ばした。
届かないので枝に足を乗せ、もう一度手を泳がせると細い棒に指先が当たった。
(忘れるなんて、なんでフリンはそんなことを言うんだ)
とにかく彼の元に行かなければ。 気が急くせいでバクバクとマドカの心臓が鳴った。
「とっととやれよ。 そうしろと言われてるのは分かってるんだ。 いきなり切り付けられるとは思わなかったけどね………でも、もういいよ」
(い、いや………)
「おい………」
「父さんもキミらも間違ってる」
「………ダメだな。 口を割りそうにない」
木の幹にしがみついていたマドカは動けなかった。
ザリ、ザリと地面を歩く音が近付いてくる。
見ずとも刺すような緊張感がマドカの所まで伝わってきた。
(話の内容が本当なら、彼らの目的はラプンツェルだ)
「フリン!! 私、行くから! フリンと一緒に行くから」
マドカが叫んだのと、ゴツとでもいうような鈍い音が数度、振動となって木に響いたのはほぼ同時だった。
あっという間に静かになった。
(呻き声………と、咳こむ音………?)
マドカの全身はガクガクと震えていた。
再び男の声が聞こえてくる。
「さっきから子供の声が上から聞こえるが」
「ガキなんか相手にしてられるかよ……ったく。 後味のわりい仕事だぜ」
それから、途切れ途切れのフリンのものも。
「や…約束………だ…マドカちゃ………ここ、から」
「フン………住民に聞き込みだ」
急ごう──────……