第8章 ラプンツェル…少女の物語♥♥
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まだ明るかった。
朝になったのか。
(それとも夕方………?)
「………」
意識が戻って来たがマドカは動けなかった。
どんな顔をすればいいのかと困っていた。
ただどことなく。 すっきりと頭が冴え、代わりに肌や粘膜には細かくひりつく余韻が残っていた。
夢中になり過ぎて気付かなかった────これも初めての経験だった。
「わ、私」
それでも奮起して体を勢いよく起こし、勇気を出して寝床の隣を見た………のに、フリンの姿はそこには無かった。
「フリン………あれ?」
帰るにしてもひと声掛けて欲しかった。
と、彼と直前にしていた会話が頭に浮かぶ。
────もしも僕がいなくなっても
「フリン?」
上衣を引っかけたマドカが洞の出入り口に走る。
フリンがいつも口に出さないことを言った。
普段はしないことをした。
(とても嫌な予感がする)
今は夕暮れ前らしい。
まだ明るいのが幸いした。
洞の外へ身を乗り出すと、やや離れた所に立て掛けてある、梯子がマドカの目に入った。
しかし膝を進ませ、それ以上先に行けなかった。
体が勝手に震えるし、また息が苦しくなる。
「う……っ」
怖くて悲しくて目の奥が熱くなった。
その時に、遠くの方から騒がしい声と足音が近付いて来、マドカはビクッとして身をすくませた。