第8章 ラプンツェル…少女の物語♥♥
彼が言ったことを思い返す────ここに来てしばらくして。 かつて、外に出ようとした時のことが脳裏に浮かんだ。
「……っう」
マドカがさらに体を丸くした。
見も知らない、複数の人間から向けられる侮蔑や嘲笑に耐えられなかった。
はなからの断罪に、理由や言い訳を探す隙はなかった。
マドカは洞の内側だけが自分の世界だと思い込むことにしたのだった。
外から自分を見る者はいない。
外からは危害を加えることは出来ない、と。
「大丈夫。 ここは私を守ってくれる世界なんだ」
マドカは自分で言い聞かせた。
そんなことを振り返り、腹痛をやり過ごし、夢にまどろむ間ぎわ。
『ああマドカ、綺麗だ』
『気持ちいいよ』
『良い子だ。 大人しくしていたらすぐ終わるからね』
今度は男たちの賞賛が、雨音と共に彼女を刺してくる。
まるで真っ黒な化け物の手が自分に向かって伸びてくるかのようだった。
何本もの巨大な手が。
息苦しくなりマドカの体から汗が噴き出た。
「はっはっ…はっ、はあっ」
浅い呼吸を繰り返し彼女は目を見張っていた。
(気のせいだ。 ここは安全なはずだ)
何度も呟き、空気が吸えるようになるまで我慢した。
うずくまったマドカはその場で身を震わせ続けた。